2025年2月28日発表
第18回調査(2024年1~3月実施)と第6回リフレッシュサンプル調査(2024年1~3月実施)の集計結果について、プレスリリースを行いました。
パネル調査からみる利他的行動、居住地域に関する意識、介護の状況と影響、親の死別と経済状況
- 発表のポイント
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- 2007年より18年間にわたりパネル調査(同一の人々への追跡調査)を行ってきた。今回は、18年分の最新の調査データを用いて、利他的行動、居住地域に関する意識、介護の状況と影響、親の死別と経済状況について分析をした。
- 最新の調査を含むデータを分析したところ、(1)利他的行動は「学歴(教育水準)」「暮らし向き(経済的豊かさ)」「市民参画(投票の有無)」「共感性(他者との共感能力)」と関連すること、(2)地域社会での共助があまりみられないまま居住環境の安心、安全の意識が高まっていること、(3)介護をしている人の割合は年齢や性別で異なり、介護は就業や健康に影響を与えること、(4)親との死別は子の世帯収入に影響を及ぼさないが、死別前まで親と同居していた無配偶者においては世帯収入が約100万円低下すること等が明らかとなった。
- 分析結果から、ライフステージにおける人々の生活や意識の実態および変化が確認された。本調査のさらなる継続により、様々なライフステージにおける意識や行動を精確に把握することが可能になると期待される。
- 発表内容
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本研究グループは、2007年より「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」を毎年実施している。本調査は、急激な少子化・高齢化や経済変動が人々の生活に与える影響を解明するため、日本で生活する若年・壮年層の働き方、結婚・出産といった家族形成、ライフスタイルや意識・態度などがどのように変化しているのかを探索することを目的としている。同一の人々に繰り返し尋ね続ける「パネル調査」という手法を用いている点に特色があり、同じ個人を追跡することにより、個人の行動や意識の変化を跡付けることができる。
今回は、最新の2024年調査を含む18年分のデータを用いて、(1)利他的行動、(2)居住地域に関する意識、(3)介護の状況と影響、(4)親の死別と経済状況、という4つのトピックを分析した。主な分析結果は以下の通りである。
- 他人の利益のために行う利他的行動の分布とそれがどのような要因と関連しているのかを分析した。「見知らぬ人を助けた」、「慈善事業に寄付をした」、「ボランティアをした」という3つの利他的行動を検討した結果、何らかの利他的行動を行った人は、回答者全体の約3割にとどまり、残りの7割は過去1か月にこれらの行動は行っていなかった。3つの利他的行動に関して別々に関連要因を探ったが、「学歴(教育水準)」「暮らし向き(経済的豊かさ)」「市民参画(投票の有無)」「共感性(他者との共感能力)」の4つが、すべての利他的行動に関連していることがわかった。学歴については、高い教育を受けることで社会問題への認識が深まり、他者支援への関与が促進される可能性が考えられる。また、高学歴層は幅広い組織に関わる経験を持つことから、ボランティア活動などに誘われる機会が多いほか、団体運営や市民活動に必要なスキルに長けているとの解釈も可能である。次に、暮らし向きが良好なほど利他的活動に積極的であることも示された。経済的に余裕があると、他者に手を差し伸べたり、寄付をしたり、ボランティア活動に参加したりする傾向が強まるようである。さらに、投票という市民参画経験は利他的行動と正の相関を示した。市民参画に積極的な人は、社会問題への関心が高く、恵まれない他者への支援にも熱心である可能性がある。共感性についても利他的行動の動機となることが示唆された。社会経済的資源や社会的ネットワークといった客観的条件が同じであっても、共感性が高い人ほど利他的行動を行う傾向が強い。
- 2024年の調査では、「私の住んでいるこの地区はとても安全である(地区の安全意識)」「自分の住んでいる地域では、近隣の人同士お互いに助け合って生活をしている(共助意識)」「急病の時など、すぐにかかれる医療機関があって安心できる地域である(医療への安全意識)」という、居住地域に関する3つの意識について対象者に質問している。これらの項目は2008年、2010年、2020年、2022年の調査でも尋ねられており、時点間の比較が可能である。分析の結果、第1に、回答者全体でみると、居住地域の治安の良さ、医療機関へのアクセスに対する評価はおおむね肯定的なものであり、徐々にではあるがより改善に向かっている。第2に、若干ではあるものの地域の人間関係のなかでの共助は弱まっており、その水準は地区の安全意識や医療への安心意識よりも低い。第3に、これら3つの居住地域に関する意識については、回答者のライフステージや居住都市規模のあいだで差が見られる。全体として、居住地域に関する意識の変化については、地域社会での共助があまりみられないまま居住環境の安心、安全の意識が高まっているといえる。
- どの程度の人が仕事以外で介護を担っているのか、仕事以外で介護をするようになると働き方や健康にどのような影響を与えるのかについて分析した。2024年時点で仕事以外で介護をしている人の割合は、全体で8.1%であった。年齢別にみると、26-37歳で2.3%、38-51歳で6.0%、52-58歳で17.4%であり年齢が上がるにつれて介護割合が高くなっている。男女別にみると、男性で6.0%、女性で9.6%であり、女性の方が男性よりも介護割合が高い。また、2014年から2024年の11年分のデータを用いて介護の影響について分析した結果、介護は就業確率を低くし、健康を悪化させる可能性があることが明らかとなった。なおこうした影響は男女で異なることも示唆された。
- 親と同居する無配偶者が親と死別した際、世帯および個人の経済状況がどのように変化するのかを分析した。この背景には、50代の子どもの生活を支える80代の親が経済的・精神的な負担を抱える「8050問題」や介護離職の問題など、高齢な親と中年の無配偶の子どもが同居する世帯に関連する近年の社会問題がある。 分析の結果、一般的に親との死別は子の世帯収入に影響を及ぼさないが、死別前まで親と同居していた無配偶者においては、世帯収入が約100万円低下することが明らかになった。親の年金収入等が得られなくなることのインパクトは、親と同居する無配偶者にとっては小さくないことが示唆された。
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