2016年4月25日発表
第9回調査(2015年1~3月実施)の集計結果について、プレスリリースを行いました。
パネル調査から見る働き方、意識、不平等
- 発表のポイント
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- 中学生時点で獲得されていた、勤勉性、まじめさ、忍耐力などの非認知的特性が、将来の労働所得を上昇させていることがわかった。
- 正規・非正規雇用者間の「突然の残業や休日出勤がある」比率の差は、それほど大きくなかった。男性では販売・サービス職など、非正規雇用が多い職種において、特にこの差が小さかった。
- 男女ともに、2007年の調査で未婚で「結婚している方が幸せ」と回答した人々は、その後に結婚をしやすい傾向にあることがわかった。
- 発表概要
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東京大学社会科学研究所の石田浩教授らの研究グループは、2007年から毎年実施している「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の2015年調査結果をもとに、
- 非認知的スキルの経済的効用
- 正規・非正規の雇用形態の違いと仕事の負担
- 結婚・家族・ジェンダーに関する意識や未婚理由とその後の結婚行動の関連
- 資産とその相続・贈与の不平等
という4つのトピックを分析した。知見は次の通りである。
- 勤勉性、まじめさ、忍耐力という非認知的スキルは、個人の所得にプラスの効果を持っており、特に男性において大きいことがわかった。非認知的スキルは高い学歴につながることによって、高い所得をもたらしていた。また、非認知的スキルの差は、生まれ育った家庭の要因ではうまく説明できなかった。
- 正規・非正規雇用者間の報酬格差は、「突然の残業や休日出勤の有無」を理由として説明されることがある。しかし、両者におけるこの差は男女ともにそれほど大きくないことがわかった。男性では、販売・サービス職など、非正規雇用が多い職種において、突然の残業や休日出勤がある比率の、正規・非正規間の差が小さいことがわかった。
- 2007年時点に持っていた結婚や家族に関する意識が、その後に結婚を促進するか阻害するかに影響していることがわかった。男女ともに、「結婚している方が幸せ」と思っていた人々は、その後に結婚をしやすくなっていることがわかった。
- 人々が保有する資産の総額には、大きなばらつきがみられ、「1000万円以上3000万円未満」の人々がもっとも多かった。また、親から相続・贈与を受けるかどうかや持ち家の獲得など、資産形成は世帯形成との密接な関連がみられた。
2000年代後半から現在までの個人の行動や意識の変化を検証している研究は少ない。また、同一の人々に繰り返し尋ね続ける「パネル調査」という手法を採用している点で、本調査結果の信頼性は高いといえる。急激な少子化・高齢化や経済変動が人々の生活に与える影響について関心が高まる中で、実証研究に基づく本研究の知見は、議論を深める素材を提供しうるものと期待される。
さらに詳しい内容は、詳細資料をご覧下さい。(PDF版:696KB)