東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター

プレスリリース

2017年3月13日発表

第10回調査(2016年4~6月実施)の集計結果について、プレスリリースを行いました。

パネル調査から見る家族形成、意識

発表ポイント
  • 29~49歳の人々のうち、大多数は親と離れて別の世帯を構えた経験があった。男性では学校・就業に関わる理由によるものが多く、女性では結婚を理由としたものが多かった。
  • 男女ともに過度な長時間労働に従事する人々は、結婚・出産を経験する割合が低いことがわかった。
  • 子どもを持つ人々のうち、過半数が子ども保険へ加入していた。裕福な世帯ほど加入率が高く、また子どもが女子のみの世帯では加入率がやや低い傾向が見られた。
発表概要

東京大学社会科学研究所の石田浩教授らの研究グループは、2007年から毎年実施している「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」の2016年調査結果をもとに、

  1. 離家経験
  2. 長時間労働と家族形成
  3. 子ども保険への加入
  4. 人々の考える「危機」

という4つのトピックを分析した。知見は次の通りである。

  1. 29~49歳の人々のうち、 8 割以上が親と離れて別の世帯を構えた経験があった。男性では学校・就業に関わる理由による離家が7割以上であり、女性では結婚を理由とした離家が半数以上を占めていた。また社会経済的に恵まれた家庭の出身者は離家時期が遅い傾向が見られた。
  2. 2007年と現在を比較すると、典型雇用者の労働時間は減少しており、とりわけ男性においてその傾向が顕著に見られた。労働時間と家族形成の関連を見ると、男性は週70時間を超える過度の長時間労働の場合に、女性は40時間を基準として相対的に労働時間が長くなるほど、結婚や出産を経験する割合が低下していた。
  3. 子どもを持つ人々のうち、57.9%が子ども保険へ加入していた。裕福な世帯ほど加入率は高く、子どもが女子のみの世帯では加入率がやや低い傾向が見られた。子ども保険に加入している人々とそうでない人々の意識を比較すると、子どもへの教育意識には差が見られなかったが、「子どもにはできるだけ多くの財産を残してやりたい」と考えている人々が、子ども保険への加入者ではやや多かった。
  4. 人々の考える「危機」について自由回答形式で尋ねた結果、地震などの自然災害・天災を「危機」と考える傾向が、いずれの年齢・性別でもきわだって高かった。国際関係や、介護・老後問題を「危機」と捉える人々は、年齢が上がるにつれて多くなる傾向が見られた。

2000年代後半から現在までの、個人の行動や意識の変化を検証している研究は少ない。また、同一の人々に繰り返し尋ね続ける「パネル調査」という手法を採用していることで、変化を適切に捉えることができ、他の調査では明らかにすることができない信頼性の高い調査結果を提供している。急激な少子化・高齢化や経済変動が人々の生活に与える影響について関心が高まる中で、実証研究に基づく本研究の知見は、今後の政策議論を深める素材を提供しうるものと期待される。

さらに詳しい内容は、詳細資料をご覧下さい。PDF版:624KB)

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