2010年 特別講演
階層線形モデル(HLM)入門とパネル調査への応用
階層線形モデル(HLM)は、縦断研究(追跡調査、パネル調査)データの分析に 有効な統計分析方法として、過去約20年にわたり、広く教育・心理研究に使われてきた。
HLM法は柔軟であり、個人内の時間的変化と個人差のありようを表現する記述モデルとして用いた後、引き続きそれらの変化や違いを、関連する様々な要因により説明する説明モデルとして利用することができる。更には、HLM法を用いることにより、変化や違いの要因を個人と環境要因とに分割、特定することが可能となる。
教育・心理研究においてはHLM法が広範に使われている一方、社会学研究においては、計量経済学に由来する固定効果・ランダム効果モデルの統計手法も多用される。従って本セミナーの第2のポイントとして、異なる研究分野で利用されるそれらのモデルの類似点と違いとを検討することにより計量経済的手法とHLM法の枠組みとを関連付け、両者の優れた点をパネルデータの分析に生かす方法を考察してみたい。