2019年度
活動記録
戦後福祉国家成立期の福祉・教育・生活をめぐる調査データの二次分析
公開データを用いた社会階層構造と教育の変容に関する分析
戦後日本の社会意識の変容過程についての計量社会学的研究
高校生と母親の進路意識とその後の決定進路との関連
ダイアド・データを用いた家族研究の検討:夫婦、親子、きょうだい関係を中心として
高等教育機関中退者の出身背景とライフコースにかんする二次分析
要介護認定基準の変更とその影響に関する実証研究
戦後福祉国家成立期の福祉・教育・生活をめぐる調査データの二次分析
- テーマ
- 使用データ
0001 新規学卒者(中卒)労働市場調査,1953
労働調査18 京浜工業地帯調査(従業員個人調査)
労働調査55 貧困層の形成(静岡)調査
労働調査60 「ボーダー・ライン層」調査
労働調査61 福祉資金行政実態調査
労働調査62 老齢者生活実態調査
労働調査64 団地居住者生活調査- 研究の概要
2011~2018年度までの8年間、橋本健二、森直人、渡邉大輔、相澤真一の各氏が代表となり、社会科学研究所が所蔵する労働調査資料のデータの復元と分析を課題公募型二次分析研究会として行ってきた。その結果、戦後福祉国家形成期における福祉・教育・生活の様子が素描されると同時に、当時の別の統計資料との接合や、展開期の制度への目配り、世帯を対象としたデータを扱う方法の洗練など、こうした復元データの分析に特殊な課題も浮き彫りとなった。本年度は、こうした課題を引き受けつつ、これまでの分析をさらに進めて書籍の刊行とデータの寄託を行うことを目標とする。
具体的には、「京浜工業地帯調査」、「団地居住者生活者調査」、「福祉資金行政実態調査」、「老齢者生活実態調査」、「貧困層の形成(静岡)調査」そして「ボーダー・ライン層調査」の二次分析により戦後の福祉国家形成期の日本社会を描く総合的な研究成果をまとめる。また、「福祉資金行政実態調査」および「老齢者生活実態調査」のクリーニング作業を行い、公開可能なデータの寄託を目指す。 この目標達成のために、2か月に1回程度の分析報告会を繰り返し実施し、書籍刊行に向けた研究会や、必要に応じて集中的なクリーニング・コーディング作業を行う。この作業のなかでは、作業補助を仰ぐことも予定している。このほか、当時の調査にかかわった研究者への聞き取り調査も予定している。これらの作業と分析報告を積み重ねていくことにより、復元データの二次分析からこそ新たに生み出される戦後社会像の析出を目指していきたい。- 活動記録
2019/05/21 第1回研究会を開催しました。 2019/06/29 第2回研究会を開催しました。 2019/07/31 第3回研究会を開催しました。 2019/10/22 第4回研究会を開催しました。 2020/01/24 第5回研究会を開催しました。
戦後福祉国家成立期の福祉・教育・生活をめぐる調査データの二次分析
公開データを用いた社会階層構造と教育の変容に関する分析
- テーマ
- 使用データ
0759-0764 1955~2005年SSM調査,1955~2005
- 研究の概要
社会階層と教育の研究では、SSM調査を中心に、大規模な研究グループを組織して一次データを収集し、分析することに重点が置かれてきた。しかし、2007年の統計法改正により政府の公的統計調査の個票データが利用可能になったことで、二次分析の可能性は近年大きく広がっている。このため、同分野の研究者は、公的統計の個票データとSSJDAなどのデータアーカイブに所蔵される社会調査の個票データそれぞれの特性を踏まえつつ、研究課題に応じた二次分析の方法を模索するとともに、今後収集すべき一次データに関する見通しを立てていく必要に迫られている。
本研究ではこうした研究状況を踏まえ、とりわけ1980年代以降の社会階層構造の中期的な変化に着目しつつ、複数の公開データを用いて社会階層と教育の二次分析を行う。具体的には、個人の職業経歴を詳細に調査したSSM調査と、サンプルサイズの大きい公的統計(就業構造基本調査、国勢調査、21世紀出生児縦断調査、国民生活基礎調査、全国消費実態調査など)の個票データを分析する。公的統計の個票データの分析により、これまでサンプルサイズの問題のために困難であった無業者の分析や世帯構造を加味した分析、あるいは職業ごとの収入の推定などを新たにおこなうことが可能となった。本研究ではそうした研究の成果をSSM調査に基づく研究にフィードバックすることで、現代日本社会における社会階層と教育の関連およびその変容を中心とした課題を新たな側面から検討する。
公開データを用いた社会階層構造と教育の変容に関する分析
戦後日本の社会意識の変容過程についての計量社会学的研究
- テーマ
- 使用データ
0759-0764 1955~2005年SSM調査
0814 日本人の意識調査,1973~2008
PY090,PM090 東大社研・若年壮年パネル調査(JLPS-M)Wave 1-9, 2007-2015- 研究の概要
本研究会の目的は、『1955年~2005年SSM調査』、『日本人の意識調査(1973~2008年)』、『東大社研・若年壮年パネル調査wave1-wave9(2007-2015年)』という3つの社会調査データの分析から、戦後日本社会の社会意識の変容過程を計量的に解明することである。これまで、(Ⅰ)『日本人の意識調査』を対象にAPC分析を行うことで社会意識の変容についての長期的趨勢を明らかにするとともに、(Ⅱ)『1955年SSM調査』『1965年SSM調査』を分析することで1950・60年代の社会意識のありようを、(Ⅲ)『東大社研・若年壮年パネル調査』を分析することで2010年代以降の社会意識の変容について、分析を行ってきた。扱ってきた社会意識は、階層帰属意識、結婚満足度、安全保障・防衛力強化、対中意識、セカンド・チャンスへの期待、所得格差に関する意識など様々であり、それが時代、人々のライフコース、キャリア、あるいは他の様々な属性や意識の変化とともにどのように変化するのかが明らかにされた。これまで使われることが少なかった項目を活用するだけではなく、ベイズモデルやパネル分析などの方法面での検討も行ってきた。 今年度はこれまでの分析から明らかにされた結果や議論を発展させるとともに、個々の分析から明らかになった知見を総合することを試みる。
- 活動記録
2019/07/14 第1回研究会を開催しました。
戦後日本の社会意識の変容過程についての計量社会学的研究
高校生と母親の進路意識とその後の決定進路との関連
- テーマ
- 使用データ
0873 高校生と母親調査,2012
1064 高校生と母親調査,2012(偏差値データ)
高校生と母親調査(追跡調査),2016- 研究の概要
生徒の進路選択に関する多くの調査は一時点のものが多く、その時点における進路希望や意識の情報は得られても、それがどのような結果となるのかについては明らかにできなかった。また進路希望の差異を生み出す重要な要因としての家庭背景に関する変数については生徒から得ることが難しく、また得られたとしても職業や収入などは不正確なものになる。そこで、本共同研究は、高校生と母親を対象とした「高校生と母親調査、2012」(調査番号0873)およびそのフォローアップ調査(2016年)のデータを用い、高校生と母親の進路意識および両者の関係性、また高校時の生活スタイル、社会意識、家庭環境が、現実の進路選択とどのような関連をしているのかを明らかにする。具体的なテーマとしては、高校設置者と高等教育設置者の関連、低所得・貧困世帯の進路、奨学金利用状況、親の子育て戦略、親子の進路希望の一致、進路希望だけではなく職業希望がその後の進路に与える影響、きょうだい構成、男女による進路、学科選択、職業希望の差異などをあげることができる。高校時の意識、態度、家庭情報など様々な変数を用いることによって、進路決定や意識・態度の違いなどを説明することが可能となっており、クロスセクションデータの分析では困難であった、格差・不平等のメカニズムを明らかにすることが可能な研究に取り組んでいる。今年度は2018年度の研究会の成果をふまえ、高校生と母親の進路意識とその後の決定進路との関連についてより詳細な分析を行い、現代日本社会における教育の格差・不平等問題にアプローチする。
- 活動記録
2019/07/01 第1回研究会を開催しました。 2019/08/01 第2回研究会を開催しました。 2019/09/07 第3回研究会を開催しました。 2019/11/16 第4回研究会を開催しました。 2020/02/10 第5回研究会を開催しました。
高校生と母親の進路意識とその後の決定進路との関連
ダイアド・データを用いた家族研究の検討:夫婦、親子、きょうだい関係を中心として
- テーマ
- 使用データ
0191,0517,0617 家族についての全国調査,1999,2004,2009(NFRJ98,NFRJ03,NFRJ08)
0386,1138 現代核家族調査,1999,2008
0873 高校生と母親調査,2012
1064 高校生と母親調査,2012(偏差値データ)
PH010-070 東大社研・高卒パネル調査(JLPS-H)Wave1-7
東大社研・高卒パネル調査(JLPS-H)Wave8-15
結婚と日常生活に関する調査 Wave1,2018- 研究の概要
家族研究の重要な関心事の1つは、親子・夫婦・きょうだいなど、世代間・世代内の二者(ダイアド)関係における相互作用のありようを明らかにすることにある。このため、欧米の家族研究では、ダイアド・データの重要性が早くから指摘され、1980年代からデータの収集や分析手法に関する研究を蓄積されてきた。近年ではパネルデータを組み合わせることにより、ダイアド内における個々人の発達過程に加え、時間軸を視野に入れた相互影響関係を捉える試みもなされている。 日本でもダイアド・データへの関心が高まりつつある。ダイアド・データを活用した研究が蓄積され、個人や個々のダイアド関係を超えた「家族」の特性を捉えられる一方で、その問題点(回収率、調査コスト、推定モデルの複雑性など)なども指摘されている。
こうした状況をふまえ、本共同研究では、ダイアド・データを含め、同一家族における複数の構成員から収集されたデータを有効活用するための分析手法の検討・習熟を行い、複眼的な視点から家族を捉える試みを行う。用いるデータは別添資料のように多岐にわたり、夫婦や親子、三世代等、様々なダイアドを対象とし、その特性を活かした手法によって分析を行う。ダイアド・データによって新たに見えてくる特性や、統計的手法による差異による影響などをふまえ、最終的な研究成果をまとめて、公表していくことを目指す。- 活動記録
2019/07/12 第1回研究会を開催しました。 2019/11/15 第2回研究会を開催しました。
ダイアド・データを用いた家族研究の検討:夫婦、親子、きょうだい関係を中心として
高等教育機関中退者の出身背景とライフコースにかんする二次分析
- テーマ
- 使用データ
1227 全国就業実態パネル調査, 2018
0764 2005年SSM日本調査, 2005
PY090 東大社研・若年パネル調査(JLPS-Y)Wave1-9,2007-15- 研究の概要
高等教育の大衆化が達成された現代日本において、高等教育からの中退者が目立つようになってきた。本課題では、さまざまな大規模データを用いることで、彼/彼女らの出身背景やライフコースを実証的に検討し、その社会階層論的な意味を問い直す。出身家庭の階層的背景と中退選択の関連と、中退の帰結として本人が到達する階層的地位との関連が同時に成立することによって、社会移動の観点からは高等教育中退は下降移動(あるいは下層再生産)の重大なトリガーとして解釈できるのではないか。しかもそれは、近年の日本の社会的状況や制度的条件下で、より深刻な問題となっているのではないか。これらこそが、本研究の核心をなす問いである。
問題の重要性にもかかわらず、日本においては、高等教育中退をめぐる計量的な実証研究の成果はこれまでのところ決して多くはない。そのひとつの理由は、中退率が低いために、標本調査データを用いた計量研究ではケースが乏しかったことがある。そこで本課題では、代表性の高い大規模データを複数プールすることで、ケース数にかかわる問題を解消し、信頼に足る実証的な知見の創出をめざす。- 活動記録
2019/11/16 第1回研究会を開催しました。 2019/12/27 第2回研究会を開催しました。 2020/03/13 第3回研究会を開催しました。
高等教育機関中退者の出身背景とライフコースにかんする二次分析
要介護認定基準の変更とその影響に関する実証研究
- テーマ
- 使用データ
0897 日米LTCI研究会東京・秋田調査Wave1-3,2003-2007
- 研究の概要
高齢化の進行に伴い、認知症高齢者に関わる介護問題は、大きな社会的注目を集めているようになっている。しかし、厚生労働省の1999年版の要介護度判定ソフトの結果は、認知症高齢者が低く評価され、認定ランクが低く判定されることや在宅の介護の状況を十分に反映していないことがあるため、利用できるフォーマルケアの量が過小に判定された恐れがある。したがって、フォーマルケアを通じた主介護者の介護負担を緩和する機能がうまく働かない可能性がある。しかし、2003年4月から採用された要介護認定基準一次判定ソフトは1999年版の問題点の一部を修正した。この政策変更は、認知症を含む高齢者の要介護度判定はどのような影響があったのかについて十分な検証が行われていない。
仮説:
要介護認定基準の変更により、認知症高齢者が正しく評価され、主介護者の介護負担が軽減され、その健康状態は良くなる。予測される結果:
- 他の要因を一定したうえで、認知症高齢者の要介護認定結果は、有意に上がると推定される。
- これにより、フォーマルケアの量が多くなることが期待できる。
- 上記の結果の下で、主介護者の健康状態が良くなることが期待できる。
- 活動記録
2019/10/11 第1回研究会を開催しました。 2019/11/15 第2回研究会を開催しました。 2019/12/13 第3回研究会を開催しました。
要介護認定基準の変更とその影響に関する実証研究